幸せ探しの旅

　お待たせしました。前回の続きです。ここから更にヘビーな内容になるので似たような体験をされた方は閲覧注意です。フラッシュバックされる恐れがあります。まとめの記事まで読むのを我慢してください。


　因みに私が引き寄せの法則を知るずっと前の出来事、悪い見本として捉えてください。最後のまとめの回は明るく締めたいと思います。








　店長としての初年度を絶好調で終え、2年目に突入するわけですが、予算は前年の売り上げで見られるので、めちゃくちゃ高くなっていることに正直びびっていました。自分で作った前年とはいえ、部下達とのチームワークで奇跡的な数字を叩いてきただけに、もう一度それが出来るのか不安でした。



　でも今の面子なら出来る。そう信じるしかないと思っていました。



　しかし、一番の売り頭の副店長の女の子が都内のお店に栄転となったのです。彼女にとってはいいことですし、前々から目をつけられていたのは分かってましたが、うちのお店では大打撃でした。そして代わりに来たのが、もう辞めることを伝えて都内の店舗から外されたやる気の無い男の子でした。



　当たり前ですが、チームワークもバラバラになり売り上げはどんどん下がっていきました。




　その辞めると言ってる副店長とは何度も衝突しましたが、もう辞める気満々の彼には何を言っても暖簾に腕押しで、他のメンバーに影響が出ないことに努めるしかないと思いました。





　追い討ちをかけるように、隣のスペースに強豪ブランドが入ってきました。都内にしかないブランドでしたが、その地区初出店で、どんどん顧客様は取られていきました。





　そして、担当の係長も厳しい人に変わり、毎日電話で怒られる日々が続きます。




　休みの日にも携帯に怒りの電話がかかってきました。｢副店長の計数意識が低すぎる!! 教育がなってない!!｣と。内心、｢そんな奴送り込んで来たのはどっちだよ！｣と思いましたが、とても言い返せる状態ではなく、ただひたすら申し訳ございませんと謝るだけでした。





　そして恐れていた予算を落としての初めての店長会、前年は達成率1位で皆の前で誉められましたが、ビリに近い達成率で逆にさらし首にされてしまいました。



　言い訳をして、鬼のように詰められている店長達を前年は目の当たりにしたので、言い訳せずに、ただひたすら目論見が甘かった、準備不足、顧客不足と反省しているふりを続けました。




　ただそんなこと言っても、もちろん数字はとても追い付かずに、日々怒られる毎日で、とうとう前年を落としている店舗が3店舗しかないという時に、月曜日だったと記憶してますが、閉店後に本社に呼ばれました。




　もうその場を取り繕う、改善策などの準備は万全でしたので、たかをくくってました。




　人間怒られ過ぎても慣れが出てくるのか、だんだん肝が座ってくるのか、私はそういうタイプでした。





　そして、本社に着くやいなや、その3人の店長を並べさせられて、｢今から挨拶運動と笑顔トレーニングをやってみろ。｣と言われました。




　私はしまったと思いました。





　そうなんです。この会社は毎朝、朝礼前に店舗の前で挨拶運動と笑顔トレーニングをやらなければいけない会社なのです。





　私も都内の店舗にいたときは、係長もたまに巡回で朝から入るので、毎朝やっていましたが、地方中枢都市だと朝から来ることが無いので、やったりやらなかったりが続いて、なあなあになっていたのです。




　その私も含めた3人の店長は地方の店舗で、しっかりとやってないだろうなと思われる店長でした。




　一年近くまともにやってなかったけど、フルに頭を回転させて思い出してやってみましたが、途中で躓いてしまった時に、いきなり係長からグー✊のパンチが飛びました。｢お前やってねえだろう!! だから前年取れねぇんだよ!!｣




　


　その後も胸ぐらを捕まれて、壁に押し付けられ、弁慶を何度も蹴られました。課長と係長二人で指導に入っていたのですが、一番最初に私に見せしめなのか暴力と罵声が集中しました。



　他の二人も平手打ちを食らいましたが、なんで俺だけグーなんだよとワナワナと腸が煮えくり返りそうでした。




　この時点で、今の時代だったらアウトなのですが、当時はコンプライアンスなんて言葉も無く我慢するしか無かったのかなと思います。



　ただ私は、中学時代に体罰をたくさん経験してきたので、そこが逆にラッキーでした。東北のある県庁所在地の市内で一番のヤンキー校だったのですが、体罰無しでは収拾不可能な状態だったのです。今だったらニュースになってるはずですが、担任にも、生活指導にも部活の顧問にも、平手は勿論、裏拳、グーの手、竹刀等で散々殴られてきたので、なんとかトラウマみたいなことにはならずにすみました。むしろ｢覚えてろこの野郎!!｣的な敵意を抱き始めました。
　



　この挨拶運動と笑顔トレーニングは深夜の２時まで続きました。やっとぶっ通しでまともに出来た時に、拍手と激励が飛び、｢お前らならきっと出来るよ!!｣と見え見えのパフォーマンスで終わり、泣いている店長もいました。



　私はただただタクシー代いくらかかるのかだけが心配で、気が気で無かったです。そして、たまたま当時付き合っていた彼女の家が本社に近かったので、タクシー代も安く済むと思い、無理を言って泊めてもらいました。



　彼女は、その年から保育士になったのですが、朝が早くとても迷惑そうでした。
　
　

　彼女が大学一年生から、そして私が社会人一年目から付き合い出したのですが、丁度5年目になって私がフラれて別れることになったのです。



　彼女が働き出したのと、私が店長2年目で心に余裕が無くなった頃に、時間が合わないことや、私の自暴自棄の態度等が、彼女にとって大きなストレスとなり、積もり積もって爆発して別れを切り出される訳です。この時のショックの方がトラウマになりかけました。初めての彼女で免疫が無かったからです。




　そんな感じで数店舗しか前年に未達の時で、自分のお店もそうであった場合は、月曜日を向かえるのが憂鬱でした。



　日曜日の閉店間際にあと数万で前年売上を越えれる時は自分で買ったりもしました。所謂自爆買いというやつです。



　月曜日の夜に呼び出されて、恫喝に耐える気力も無くなり、タクシー代を使うくらいなら、買って楽になった方がいいと思ってしまったのです。しかしこれは癖になりますし、どんどん自分の首を絞めていることになります。



　普段の生活に支障が出ないようにボーナス払いで、買っていました。ただボーナスの時期に、支払いで全て消えてしまうことがとても悲しくて悔しかったです。｢何のために働いているのだろう？｣



　でもそれ以上に、恐怖の呼び出しから逃げたくて、その場は楽な道を選んでしまったのです。弱かったのです。



　そんな訳で、店長としてのボーナスをちゃんと貰えたのは最初の一年間くらいで、後の4年間は自爆買いでほぼ消えました。額で言うと、どのくらいになるのでしょう。新車で国産車が買えるくらいでしょうか。




　でも上には上がいました。同じブロックで店長同士でも飲もうと都内で集まりがあって、その都内の大きいお店の店長が、｢ちょっと銀行行ってくる｣と言って、消費者金融のATMに走って行きました。




　｢そこ銀行じゃねえよ!!｣って皆で笑って突っ込んだのですが、大きいお店の店長あるあるなのですが、消費者金融が銀行替わりになっていたみたいです。




　そこの店長は母店という係長が付きっきりに入るお店なので、圧が尋常じゃないくらい凄かったみたいです。自爆買いの額がボーナスなんかとっくに越えて、毎月の給料も支払いで消えていたらしいです。




　でもその店長はこう言いました。｢でも一番凄いのは、俺達を恫喝している〇〇さん(係長)だ。あいつ店長時代に自爆買いが凄すぎて、カードも全部止められて、ブラックリストに載っている。消費者金融のカードも何枚も持っている。そしていつもあの人とお昼休憩にランチ行くと、『まとめて返すから払っておいて』と言われて、かれこれ1万円近く帰ってきてないんだよ。推定借金額は新車の高級外車が買えるくらいあるらしい。｣




　これを聞いて唖然としました。｢こんなズルして偉くなってなんになんだろう。そしてなんで俺達はこんなやつらに怒られまくっているのだろう？ 早く逃げなければ取り返しのつかないことになるぞ｣

　



　この現象は全国的に行われていたことでもあります。





　ある日曜日の夜に臨時の店長会議で呼び出されました。課長が焦った感じで話し出しました。内容は、｢関西のレディースのお店で裁判を起こされた。店長が自爆買いをし過ぎて1000万円近く借金をしているらしいのだが、会社のせいにされている。｣｢我々も昔は、お店のオープンや、シーズンの立ち上りの度に景気づけのために、買ったりもしてきたし、それをお前らに見せてきた節はある。でもこれからは禁止だ。買ってまでの嘘の売上報告はいらない。でも勘違いするなよ。もちろん数字を落としたら今まで通り全力で締め上げる。｣




　課長が｢全力で締め上げる｣と言葉を出したその時に、係長達に笑いが起きたのが気持ち悪すぎて、今でも鮮明に覚えてます。




　ただそれで自爆買いが減ったのかは微妙でした。


　

　ある時うちのお店に、今月はどうにか予算を取らせるようにと課長の指示で係長が、月末最終日に入りました。




　大きな額ではありましたが、踏ん張れば届きそうな額だったので、いつもご愛顧頂いていた顧客様などを電話でお呼びしたり(本当はやりたくなかったけど)、そのおかげであと1万円ってところまできました。でも閉店10分前でお客様は通路に誰一人と歩いていません。お店はだんだんザワついてきました。



　そして、係長が｢俺、本社に戻るから。　いいか空気読めよ。今月も落としたらお前、後が無いぞ！｣とだけ言って去って行きました。




　係長が帰った後も、誰一人歩いていなかったので、仕方なく私が自爆買いをしました。




　そして、売上報告を係長の携帯にしたのですが、｢凄いじゃん!! あの状況でよく予算行ったよ。その粘り必要だよ。課長にも電話しな！きっと喜んでくれるよ。｣と白々しいお褒めの言葉がありました。





　前に話した、都内の母店の店長も言っていました。今までは係長は閉店後も残って資料などの作成をしていたのに、数字が前年より足りない日に限り、閉店間際に本社に向かうようになったのです。そして必ず｢意地を見せろよ！｣と言い残して去るらしいのです。直接買えという指示を出して無い証拠隠しをしてたのだと思います。




　何故、今回このテーマ、ブラック企業について書こうと思ったのかは、今年起きた日大アメフト部の悪質タックル問題を見た時に、我々が受けた圧に似てると思ったからです。




　監督やコーチは直接指示を出していない、選手が勘違いしてやってしまったという結論にされてしまったのですが、監督の発した言葉｢やらなきゃ意味ないよ。｣　その言葉がどれだけ彼の頭の中をよぎり、冷静さを無くしてしまったのかが想像つくからです。




　早く逃げなければと思っていたのですが、中々転職活動などの行動に移せない自分もいました。残業や公休出勤も多く、肉体的にも精神的にも疲れきっていました。










　でも、懐かしい人からのある電話が、脱出出来る糸口が見つかったのです。





　続きます。


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